Wednesday, September 21, 2005

学会発表要旨(赤黒鉛筆について)

日本文房具学会第38回学術大会発表要旨

トンボ鉛筆製「赤黒鉛筆」の利点と欠点について

 トンボ鉛筆から発売された赤黒鉛筆は、発売当時にメディア各紙にとりあげられるなど、鉛筆としては例外的に注目を浴びたが、実際その文房具としての質はどのように評価できるのだろうか。発売からある程度の時間が経過し、当初のメーカーによる広告・宣伝、およびその影響を受けた報道も見られなくなった現時点でその質を検証することとしたい。
 利点として第一にあげられるのは、日常的な筆記をおこなう黒鉛筆から持ちかえることなく赤鉛筆(正確には朱鉛筆)を使用できるということである。これは、2004年2月に実施された第24回文房具国勢調査で明らかになった、日本社会における赤鉛筆離れの原因をふまえたものであった。また、軸に六角形を採用した点も、机から転がり落ちて、そのたびに芯がポキポキ(擬音語として「ボキボキ」が不採用になった点については、第21回学術大会報告書を参照のこと)折れるがゆえに赤青鉛筆は嫌われる、という潜在的な消費者意識に配慮した点だと考えられる。
 欠点としては、やはり従来の鉛筆からの仕様変更をあげなければならない。赤鉛筆や青鉛筆は黒鉛筆と比較して芯の材質が柔らかいため太くする必要がある。今回、黒鉛筆を赤鉛筆と一本にまとめるために、黒鉛筆の芯を赤鉛筆の太さにあわせるという方法がとられたわけだが、出先など鉛筆削りのない場面で鉛筆を使用するばあいなど、やはり従来の約1.5倍の太さになった黒鉛筆の筆跡は太く、書きにくく感じられる。この違和感にたいして消費者の〈慣れ〉を期待するのか、あるいは別の方策を考えるのか、いずれにしても課題であろう。また、筆記実験においては、黒鉛筆の芯の筆触に従来の同社の鉛筆と比較してザラザラしたものがあると感じた被験者がいた。これが鉛筆の芯の質によるものなのか、あるいは赤鉛筆の滑らかさと対照されることによって生じる感覚なのか、さらに検証を進める必要がある。